平成27年度企画展「本はもう一人のわたし―児童文学者・鈴木喜代春ー」

企画展(収蔵資料展)

1 企画展「本はもう一人のわたし―児童文学者・鈴木喜代春ー」

平成28年1月30日(土曜日)から4月10日(日曜日)
時間9時00分から17時00分
休館:2月25日(木曜日)、3月24日(木曜日)
会場:青森県近代文学館企画展示室
入場無料

青森県南津軽郡田舎館村に生まれた児童文学者・鈴木喜代春(大正14年から)は、無着成恭の『山びこ学校』(昭和26年)と並び称せられた黒石小学校四年生の生活記録『みつばちの子』(昭和27)によって日本の生活綴方教育史に大きな足跡を残し、戦後の新教科・社会科において、教師の指導性と生徒の学習活動を統一する「社会科検証学習」を打ち立て、全国に知られた教育実践者でした。

戦後間もないころ、喜代春は一つの壁に突き当たります。社会科の学習が進むにつれ、子どもたちの表情が暗くなっていったのです。貧困生活を送る農村の子どもたちが、自分たちの置かれた厳しい現実を知って希望を失っていったからでした。よりよい生活を切り開くための学習が、全く逆の結果を導いてしまった。自分の授業は知識ばかりで「人間」が不在になってしまっていた――悩みに悩んだ末、喜代春は「物語」を教材として取り入れることを考えつきます。困難な状況下でも、理想を抱いて乗り越えていく人間の姿を描いた子ども向けの作品を探しましたが、容易には見つかりませんでした。

「無いならば、自分が書くしかない」そう考えた喜代春は物語を自作し、学級文集に載せて教材としました。この作品が後に、『北風の子』(昭和37年)として刊行されることになります。子どもたちの目に輝きが戻るのを見て大きな手応えを得た喜代春は、その後も「人間のいる教科学習」にするための作品を書き続け、『北海の道』(昭和41年)、『白い河』(昭和44年)、『十三湖のばば』(昭和49年)等が生まれることとなりました。

やがて高度経済成長の時代に突入すると、世の中は、効率と金に目を奪われるようになり「人間」を見失っていきます。学校では偏差値を絶対視し、落ちこぼれが生まれ、自殺する子どもたちまで現れるようになりました。この風潮を嘆いた喜代春は、「学校の主人公は子ども」の信念のもと「ダメな子シリーズ」をはじめとする「学校もの」を書き始めます。こうして刊行された喜代春の著書は、実に200冊にものぼります。

この企画展では、時代の嵐に翻弄されながらも屈することなく、戦後七〇年にわたって教育に「人間」を取り戻そうと奮闘し、信念をもって書き続けた鈴木喜代春の業績と作品の魅力を紹介します。

鈴木喜代春

2 企画展「本はもう一人のわたし―児童文学者・鈴木喜代春ー」日曜講座

平成28年3月6日(日曜日)14時00分から15時00分

鈴木喜代春・児童文学への思い

伊藤文一(当館総括主幹)
会場:青森県立図書館研修室(青森県立図書館4階)

※日曜講座の申し込みは不要です。

参加は無料です。

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