移動図書館かもめ号巡回開始

1953年~1964年

移動図書館かもめ号

画像: 巡回へと向かう移動図書館かもめ号。

「昭和27年に東北各県にさきがけて移動図書館車「はと」号を購入し,館外奉仕面において多くの成果を上げてきたが,山間地の多い青森県の実情と,利用団体からの強い要望によって,新車「かもめ」号が誕生した。これは従来運営した結果から,山間地の多いと云う地理的条件,巡回回数と積載量(図書)の問題,図書の破損を軽減できるような書架の構造等を考慮してつくられたものであり,これによって現在なお運営している「はと」号とともに,津軽・南部を交互に巡回している」(「新鋭「かもめ」号購入―青森」『図書館雑誌』1958年9月号)

当時、山間部が多く海岸線の長い青森県の「点と点を結ぶ道路事情は日本最低の折り紙がついていた」(「対外活動の現況(1)」『東奥日報』1967年10月7日)。悪路を走る車両の故障にたびたび苦しめられながら、職員は5泊6日や7泊8日の日程で県内各地を巡回する激務を続けた。

10月13日(金)
「高く澄みきつた秋空の朝,館長ら職員に見送られてブツク・モビール「かもめ号」は図書館前を出発する。(中略)午後,4時,下北の中心地,むつ市公民館前に着く。(中略)水川目から,2人の青年が偵察に派遣されてきていたので,自転車ぐるみ同乗させ,4時半出発。「先月,車の故障で夜おそく着いて,とうとう,水川目の巡回を中止したんですよ,それで偵察員が来たんですネ......」とM主事しきりに苦笑」
10月14日(土)
「朝5時頃,目が覚めると恐山の頂きあたりから,もの凄い雷鳴が轟き,閃光が走つて,するどい雨足が,窓をひだてて,視界をさえぎつていた。晴れ間をえらんで7時半頃から図書の貸出をおこなつた」
10月15日(日)
「午後2時半頃,桑畑を訪ねると,ここは,丁度,秋祭りの賑わい。八幡宮の鳥居の前には,御幣をうやうやしく持つたオヤヂさん,美しく着飾つた村の小供たちが居並んで,祭りは最高潮の頃合い。ちよつとのま,図書の貸出どころか通行も止つてしまつた」
10月16日(月)
「タイヤの両輪の間に大きな石が挟つたので,M,Sの両氏,車軸のネジをゆるめたり金槌で叩いたり,汗ダクの奮斗ぶりだつた」
10月17日(火)
「川内から,山林軌道で40分ばかりの「畑」「湯の川」までゆく予定になつていたのだが,台風後で軌道の地盤がゆるみ,「いのち」の儀は保証しかねるという」
10月18日(水)
「曇り日の朝,7時起床,3人がかりで,朝食前に「かもめ」のパンク修理をする」
10月19日(木)
「小学校への道は,ドロンコで,通行不能となつていたので,M氏が歩いて連絡にいき,とうとう1時間ほど予定を超過」
10月20日(金)
「尾駮地区は架橋工事がまだ続いて,通行不能(中略)下北コース,7泊8日の日程を,とどこおりなく終え,使命を終つた「かもめ号」は,疲れきつた一行を乗せて帰館の途についた。
 全走行568キロ」(「晩秋の下北をゆく」『三潮』1961年11月号)